「方向補語」は、移動や方向を表す動詞の後に置き、動作・行為の方向を表す補語です。「方向補語」には、「単純方向補語」と「複合方向補語」の2種類あります。
①「単純方向補語」
“来” → 動作が、話し手や話題に上がっている事柄に向っている場合
“去” → 動作が話し手や話題に上がっている事柄から離れて行く場合
【基本文型】
主語 + 動詞 (+目的語) + 来
主語 + 動詞 (+目的語) + 去
您请进来吧。
(どうぞお入りください)
妈妈出去了。
(お母さんは出かけました)
我回来了。
(ただいま〔帰りました〕)
動詞が目的語をとり、それが場所を表す目的語の場合は、動詞と補語の間に置きます。
请到办公室来吧。
(事務所へ来てください)
经理回公司去了。
(マネージャーは会社へ戻りました)
単純方向補語には、他に具体的な方向を表す下記のグループがあります。
“上”(下から上へ) “下”(上から下へ)
“进”(外から中へ) “出”(中から外へ)
“回”(元の場所に戻る) “过”(通過する)
“起”(低いところから高いところへ)
それぞれ動詞の後ろに置いて、移動・方向を表します。
例を挙げてみましょう。
“爬上”(這い上がる) “跑下”(駆け下りる)
“跳进”(飛び込む) “拿出”(取り出す)
“走过”(通り過ぎる) “跑回”(駆け戻る)
“站起”(立ち上がる)
②「複合方向補語」
「複合方向補語」は、動詞の後に2語以上の補語を置く形です。
その組み合わせは、下記ようになります。
“上来”(上がってくる) “上去”(上がっていく)
“下来”(降りてくる) “下去”(降りていく)
“进来”(入ってくる) “进去”(入っていく)
“出来”(出てくる) “出去”(出ていく)
“回来”(帰ってくる) “回去”(帰っていく)
“过来”(向こうからくる) “过去”(向こうへいく)
いくつか例を挙げてみましょう
小王从一楼爬上来了。
(王くんは1階から這い上がってきた)
大家从山顶走下去了
(みんなは山頂から歩いて降りてきた)
我看见妈妈走过来了。
(お母さんが向こうから歩いてくるのが見える)
③「方向補語」の否定形
方向補語の否定形は、“没”を使用します。
我没(有)带雨伞来。
(わたしはかさを持ってきていません)
他们还没(有)回办公室来。
(彼らはまだ事務所に戻ってきていません)
我没(有)带回课本来。
(わたしは教科書を持たずに帰ってきました)
④「方向補語」の派生的用法
方向補語は、方向を示すという本来の役割から派生して抽象的な意味を表すこともできます。この派生的用法も、中国語会話の中でよく使われます。
“上”:実現・成就したことを表します
办公室的门已经锁上了。
(事務所のドアはもう鍵をかけました)
“下”:動作・行為の結果、何かが残る、落着することを表します。
给我留下您的地址。
(あなたの住所を書き残してください)
“来”:話し手がある結論を得るまでにそういう過程を経たことを表します
他看来身体很健康。
(彼はみたところとても健康だ)
“出来”:
①事物の発見・識別を表します
听他的口音,听出来他是广东人。
(彼の訛りを聞くと、広東出身だとわかる)
②事物の完成・実現を表します。
我终于写出来了一本小说。
(わたしはついに小説を一冊書き上げた)
“下来”:ある結果に到達して、その状態が続いていることを表します。
我把营销部的直拨号码记下来了。
(わたしは営業部の直通電話番号を書き留めた)
“下去”:動作や状態がそのまま継続していくことを表します
这部小说一点意思都没有,我不想再看下去。
(この小説は少しも面白くないので、もう読む気がしなくなった)
“起来”
①動作や状態が開始したことを表します。
天气渐渐热起来了。
(しだいに暑くなってきた)
②動作の完了または目的が達成したことを表します。
我们的乐团是去年组织起来的。
(うちの楽団は去年結成された)