以前の【文化篇】で中国料理や各地の麺を紹介しましたが、今回は中国のお菓子を取り上げてみましょう。
中国のお菓子は種類が非常に多く、蒸し菓子、揚げ菓子、焼き菓子、フルーツ菓子などに分かれます。日本で有名なものは中秋節(お月見)に食べる月餅や、中華のデザートに出る杏仁豆腐などがあります。その他に、日本ではあまり知られていませんが、中国では非常にポピュラーなお菓子もあります。
それでは、どんなお菓子があるか見ていきましょう。
糯米八宝饭
“糯米”とはもち米のことで、“糯米八宝饭”は浙江省寧波(ニンポー)の特産品として有名です。蒸し菓子に分類されます。
材料にはもち米のほかに、アズキ、ナツメ、果物の砂糖漬け、ハスの実、リュウガンなど、8種類の材料を使います。“八宝饭”の名前はここから来ています。もち米と他の材料を混ぜたものを蒸して、砂糖で味を付けます。見た目はもち米を使った料理のようですが、とても甘い味付けで、お菓子に分類されます。
驴打滚
“驴打滚”は北方、特に北京、天津でよく食べられている蒸し菓子です。材料はもち米、アズキ、キビの粉を使います。もち米を練ったものにアズキの餡を塗り、ロールケーキのように巻いた後に蒸します。蒸し上がったものにキビ粉をまぶして完成です。
“驴打滚”の発祥はいろいろな説が有るそうですが、いずれも清朝の時代に始まったとされています。もともとは、清朝の主人公である満州族の食べ物だったのでしょう。
中国の北方らしい素朴なお菓子です。
麻花
“麻花”は日本でも有名で、横浜や神戸の中華街ではたくさん見られます。日本では「よりより」などと呼ばれます。
その起源は陝西省にあると言われますが、現在では天津の“麻花”が大変有名です。
小麦粉を水でこねたものを棒状に伸ばし、その後にくるくるとひねって油で揚げます。揚げ菓子の一種です。天津には特にサイズの大きなものが有り、“大麻花”と呼ばれています。
天津には、有名な“十八街麻花”があります。1927年創業の老舗“桂发祥”のブランドです。天津では、この“十八街麻花”、中華まんの“狗不理包子”、揚げ菓子の“耳朵眼炸糕”を併せて、“天津三绝”(天津の三大食品ブランド)と呼ばれています。
青团
“青团”は中国式の草餅で、日本の草餅と良く似ています。上海を中心とする江南地区の伝統的なお菓子です。材料は日本と同じくヨモギをもち米に練りこんで餅にします。中味の餡にはアズキかハスの実を使います。
江南地方では、旧暦の清明節に“青团”を食べる習慣が有ります。清明節は日本のお盆に当たり、先祖の墓参りをします。“青团”はその時のお供えものとして食べられたのでしょう。日本でお盆に団子を仏前に供えるのとよく似ています。
現在では清明節だけでなく、常時コンビニなどで買えるようになりました。しかし、地域的に見ると、やはり江南地区に多く、北京などの北方ではあまり見かけないかもしれません。上海のコンビニでは普通に買うことができます。
蛋挞
“蛋挞”は、日本で言う「エッグタルト」です。“蛋”は玉子、“挞”は英語の「Tart」の音訳です。その名の通り、小麦粉で作った生地の中に、鶏卵をベースにした餡を詰めて焼いたお菓子です。
ヨーロッパから伝来したものですが、当時英国領だった香港と、ポルトガル領だったマカオに持ち込まれ、その後中国式の西洋菓子として定着しました。現在でも本場は香港、マカオを中心とする広東省一帯です。
いろいろな種類が有りますが、その中でも特に“葡式蛋挞”(ポルトガル式エッグタルト)が有名です。香港、マカオ、広州にはたくさんの専門店とブランドが有り、独自の発展を遂げています。
中国では、ファストフードチェーンの“肯德基”(KFC)でも販売されています。
大白兔奶糖
最後に紹介するのは伝統的なお菓子では有りませんが、中国で非常に有名なキャンディーです。“大白兔”(ホワイトラビット)はブランド名、“奶糖”は「ミルクキャンディー」のことです。これは、上海の“冠生园”というメーカーの製品で、1959年に発売されました。1959年は社会主義(計画経済)の時代でしたが、その頃に生まれたブランドがいまでも全国の消費者に愛され、現在ではトップブランドになりました。
1972年にアメリカ大統領(ニクソン)が初めて中国を訪問したときに、周恩来首相がニクソンに“大白兔”を贈ったそうで、大変格式の高いブランドでもあります。
このキャンディーには個人的な思い出が有ります。ずいぶん前ですが、北京留学中に大学内のお店で“大白兔”を買ったことがあります。持ち帰って食べてみると、なぜか全く味がしません。よく見ると、小麦粉を練りこんだ粗悪品でした。お店ではバラ売りでしたが、完全なコピーの粗悪品です。当時すでに有名ブランドになっていたので、質の悪いコピー品がかなり出回っていたのでしょう。
“大白兔”は中国でも年配の方にとっては、子供の頃を思い出すたいへん懐かしいブランドでもあるそうです。
今回は中国のお菓子を紹介しました。日本の和菓子とはまた違ったものですが、中には中国の伝統文化を反映したものも有ります。機会があればぜひご賞味ください。