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【文化篇】 中国における吉祥のシンボル

今回の【文化篇】は、中国における「吉祥」(縁起物)のシンボル(図案)をいくつか紹介したいと思います。

これらのシンボルは、中国の長い歴史の中で、一種の民間伝承として受け継がれてきました。絵画や陶磁、書など、いわゆる芸術品とは異なる、もう一つの中国文化を形づくる要素だと思います。そこには、中国人独自の発想や価値観が見て取れます。

 

“福到”

 

毎年中国の春節旧正月)になると、各家の門に「福」の字をデザインしたものを貼りますが、その時に、「福」をひっくり返して貼ります。

これは、“福倒了fú dàole”(福がさかさまになった)と“福到了fú dàole”(福が来た)をかけたものです。すなわち、「福」をさかさまにすることで、「福が我が家にやって来る」という一種の縁起物です。しかも、それを年の初めの春節に行うことで、その年がずっと幸せに暮らせるように願う、古くから伝わる習慣なのです。

この “福到”が行われるようになったのは、一説によれば明代の始め頃と言われています。

「福」の字は、通常紅い紙に筆文字で書いたり、中国伝統の切り紙になっていますが、春節前になると、スーパーや小さい商店の店先で大量に売られます。

 

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福到

“年年有余”

 

こちらも上述の“福到”と同じように、春節の時に貼る“年画”(縁起物のデザイン画)の一つです。“鱼yú”と“余yú”が同じ発音で、「余る、残る」という意味に通じることから、「毎年収穫した作物や稼いだお金が有り余る」→「裕福で幸せな生活が送れる」という願いを込めたシンボルです。

なお、中国では、お正月料理として“年年有余”という名前の魚料理が食べられています。その地域は、広東省浙江省山東省などで、食材には淡水魚のコイや海水魚のスズキなどが使われます。調理法は各地域でまちまちですが、塩味のアッサリしたものから、しょう油で煮込むこってりした味付けなどが有ります。

 

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年年有余

“蝙蝠”

 

“蝙蝠”とはコウモリのことで、欧米や日本では気味の悪い生き物と見られていますが、中国では吉祥のシンボルになっています。その理由は、“蝙蝠biānfú”の“蝠fú”が“福fú”と同じ発音で、縁起がよいからとされています。

上の2つもそうですが、中国の縁起物はモノそのもののかたちよりも、その名前の発音が吉祥に繋がることから選ばれるようです。「文の国」と呼ばれる中国の一つの特徴でしょうか。

欧米では、コウモリは「吸血鬼」に代表されるように、死や恐怖の対象として忌み嫌われて来ましたが、中国では古くから吉祥のイメージとして大切にされてきました。このような対照的な文化の違いは非常に興味深いです。

 

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蝙蝠

“双喜”

 

“双喜”は、「喜」を横に二つ並べた図案です。この吉祥シンボルの誕生には、歴史上の有名人が関わっています。

北宋の宰相王安石が23歳のときに都での科挙試験に参加しました。試験が終わって帰郷の途中に出会ったある地方役人にその才能を認められ、彼の娘と結婚することになりました。そして結婚式の当日、王安石のもとに都から科挙合格の通知が届きました。おめでたいことが二つ重なり、彼は紙をとって「喜」の字を二つ並べて書き、入り口の門に張り出しました。この逸話が後の世に広く伝わり、特に結婚式のときに“双喜”を壁などに張る習慣が定着したそうです。

 

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双喜

“福禄寿”

 

“福禄寿”は、いずれも中国の民間信仰の中の神様で、“福”は「幸福」、“禄”は「富貴」、“寿”は「長寿」を表します。

“福神”は、道教の中では「紫微大帝」と呼ばれ、人々に幸せを分け与える神様として厚く信仰されています。

“禄神”は、別名「文昌星」と呼ばれ、読書人(知識階級)の守り神とされています。特に科挙制度の普及以降に、読書人に「功名」(手柄を立てて出世すること)と「利禄」(利益と俸禄)を与える神様として尊重されてきました。

“寿神”は、別名「南極老人星」と呼ばれ、長寿をもたらす神様として人々の信仰を集めてきました。

“福禄寿”の図案は、通常この3人の神様がセットで描かれます。これは、中国人の人生における3つの願望をすべて表した最強のシンボルと言えます。

 

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福禄寿

“平安如意”

 

“平安如意”は、通常“花瓶”と“如意”という二つの道具が組み合わさったデザインで用いられます。

“花瓶huāpíng”の“瓶píng”が“平安píngān”の“平píng”と同じ発音で、「平安」に通じることから用いられます。

また、“如意”とは仏教の僧侶が使う仏具です。先端が丸くなっている棒状の道具で、僧侶が読経の時などに使います。元々は背中を掻くための道具だったそうです(孫悟空の使う「如意棒」もありますね)。“如意”は「意のままに、思い通りに」という意味で、そこから「願いが思い通りにかなう」という意味に転化しました。

“平安如意”は、「平穏無事な生活が続き」、「願いがかなう」という吉祥のシンボルとして定着しました。現在では、誕生日の送りものとして“平安如意”をかたどった置物などを贈る習慣があります。

 

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平安如意

ここで紹介したものはほんの一部で、中国における吉祥のシンボルは他にもまだまだたくさん有ります。これらのシンボルは今でも生活の中で大切に使われ、今後もずっと伝えられていくと思います。

ある国や民族の文化を考えるときに、博物館に収められた芸術品だけでなく、こうした民間に伝承されるものも重要な素材になると思われます。古い芸術品は、往々にして皇帝や知識人などの支配階級が生み出したものとですが、庶民の中から生まれるものは、支配階級をも包括しているのです。すなわち、すべての中国人が享受できる文化財だと言えます。それは現在においても変わらないでしょう。