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【文化篇】 中国武術・前編 ~中国武術の流派~

中国武術」とは中国に起源を持つ武術の総称で、日本で「拳法」と呼ばれる徒手術を基本に、槍、剣などの武器術を加えた総合的格闘技です。中国武術は、長い歴史の中でたくさんの流派が生まれました。しかし、どの流派にも共通している点は、単に相手を倒す技術だけでなく、精神面の修練を非常に重視していることです。これは、東洋の武術、例えば日本の剣術や柔術などにも共通する考え方で、西洋の武術とは大きく異なる点です。

 

中国武術の歴史

 

中国武術の起源は大変古く、一説には、漢王朝の時代に黄河流域に住んでいた人々が、戦争のために始めた教練がその起源と言われています。また、中国武術の中でも非常に有名は流派「少林拳」は、少林寺における僧侶の修業の一環として代々伝えられました。その他、南宋岳飛を開祖とする北派武術の流派もあります。

近代に入ると、中国武術は徐々に近代的な体育の一部として扱われるようになりました。そして、中華民国の時代には、全国的な武術の団体が組織化されます。その代表は、1928年に南京で設立された中央国術館です。国術館では各流派の有名な武術家を招聘し、学生に武術を教授しました。そして、1936年には、中国の武術チームがベルリンオリンピックにおいて、武術の演舞を披露しました。

新中国建国後も中国武術は伝統文化の一部として保護を受け、各地の武術学校などで教えられています。また、海外に進出した流派も多く、欧米や日本、東南アジアなどでも中国武術が盛んに学ばれています。

 

中国武術の分類

 

中国武術の分類の方法はいくつかありますが、ここで紹介するのは「外家拳」と「内家拳」、もう一つは「北派」と「南派」です。

外家拳」とは、少林拳のように身体の鍛錬を通じ、外面から身体鍛えて大きな力を発揮する武術です。一方の「内家拳」とは、太極拳のように呼吸法や内面を鍛えて柔軟な力を用いる武術を言います。

もう一つは、武術流派の発生した場所で分類する「北派」と「南派」です。「北派」と「南派」という分類は、中国の北部と南部で独自に発展した武術を指しており、一般的に「南拳北腿」と言われます。南派は拳、即ち徒手を多用し、北派は腿、即ち蹴り(足技)を多用すると言われます。

 

中国武術の流派

 

北派(外家拳)・・・少林拳翻子拳八極拳蟷螂拳鷹爪拳など

北派(内家拳)・・・太極拳八卦掌形意拳など

南派・・・洪家拳詠春拳白鶴拳など

 

それでは、中国武術の主要な流派を見ていきましょう。

 

北派(外家拳):

 

少林拳少林拳は、河南省嵩山少林寺に代々伝わる武術流派で、あるいはその流れを汲む流派も含みます。元々は禅の修業の一部として、有名な達磨大師によって創始されたという言い伝えがあります。それから、少林寺の僧たちの間で長く伝承されてきました。

なお、日本で行われている「少林寺拳法」は、戦前の中国で少林拳を学んだ宗道臣が戦後の日本で起こした武術で、現在の中国で行われている少林拳とは関係有りません。

 

翻子拳翻子拳は、中国の河北省に伝えられる武術流派です。両手の拳を連続して素早く打ち出し、あたかも爆竹が炸裂するような、非常にスピーディーな武術です。西洋のボクシングに良く似ていると言われます。「北腿」と言われ足技を多用する北派武術の中でも、徒手を中心とするスタイルで知られています。また、河北省には、鷹が獲物を捕らえる姿を模した「鷹爪拳」と組み合わせた「鷹爪翻子拳」という流派も存在します。

 

八極拳八極拳は、元々河北省滄州孟村のイスラム教徒の間で伝承されてきた流派ですが、後に漢族にも伝えらて、独自の発展を遂げました。正式な名称は「開門八極拳」と言いますが、その意味は、「八方の極遠にまで達する力で、敵の門(防御)を打ち破る」という中国武術の中でも屈指の破壊力を誇る流派です。八極拳の基本的なスタイルは「接近短打」で、極めて近い間合いでの戦いを得意とし、体当たりや肘打ちを多用します。特に、八極拳の肘打ちの威力はすさまじく、相手を一撃で倒す程の力を発揮します。

 

蟷螂拳蟷螂拳は、清朝初期に、山東省の王朗という人物によって創始されたと伝えられています。王朗カマキリが獲物を捕らえる姿を見て、それを武術に応用したので、「蟷螂」という名前が付きました。現在に伝えられているものは北派蟷螂拳を中心としていますが、南派武術にも蟷螂拳の流派が有ります。

王朗が北派の様々な武術流派を学び、それを自らの蟷螂拳に取り入れたので、非常に多くの技法を有しています。また、「七星蟷螂拳」、「梅花蟷螂拳」、「六合蟷螂拳」など、非常に多くの系統を有する武術流派としても知られています。即ち、北派の総合武術とも言える流派です。

 

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八極拳

北派(内家拳):

 

太極拳太極拳は、中国武術の中でも最も高い知名度を誇る武術流派でしょう。太極拳は、河南省陳家溝の陳一族に伝えられる家伝の流派でした。かつては、陳家の人間以外には伝えてはならないという不文律があったそうです。その発祥は、元代の人張三豊が武術の聖地武当山に入り会得した武術をベースに創造したと伝えられます。ただし、張三豊自身は中国各地に伝わる仙人の一人で、太極拳の発祥もあくまで伝説の域を出ないと言われます。

かつては閉鎖的な陳一族の家伝武術でしたが、現在では、本家の陳式以外にも、楊式、孫式など様々な系統が生まれました。その多くは敵を倒す武術としてではなく、健康維持のための体操として学ばれています。

 

八卦掌八卦掌は、その名の通り拳をほとんど使わず、てのひらで相手を打つスタイルを特徴とします。また、円周に沿った歩法(足の運び)の習得も大変ユニークで、非常に習得の難しい武術流派として知られています。

八卦掌は、清朝後期、紫禁城の宦官であった董海川によって創始されました。八卦掌もまた非常に多くの系統を持つ武術流派で、その理由は、董海川が、弟子たちにそれまで習ってきた流派の技術を取り入れて教えたからで、その結果、投げを得意とする系統や、打撃を得意とする系統などに分かれました。

八卦掌の動きはあたかも踊っているように見える、大変優雅な武術流派だと言えます。

 

形意拳形意拳は、清朝末期に心意拳を学んだ李洛能が創始したと伝えられます。その後、数人の愛弟子に形意拳の技が伝承されましたが、弟子たちはそれぞれ異なる地域でそれを教えたため、別々な系統として伝えられました。即ち、河北派形意拳、山西派形意拳という形で残っています。

形意拳は、中国の古代理論である「陰陽五行説」をもとに組み立てられた武術流派で、五行をもとにした「五行拳」と、12種類の動物の動きを模した「十二形拳」で構成されます。もう一つの特徴は、「武器の王」と言われる槍の動きを拳技の中に取り入れています。

形意拳は、他の流派に見られる大きな身体の動きや、見栄えの良い大技などが少ない、非常にシンプルなスタイルの武術流派です。

 

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太極拳

南派

 

洪家拳洪家拳は、南派武術を代表すると言ってよい流派です。日本では、香港のカンフー映画シリーズ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』で非常に有名になりました。主演のジェット・リー演じる武術家の黄飛鴻洪家拳の使い手です。

洪家拳は、南派武術の特長である「短橋狭馬」をよく表している流派で、「橋」は」腕の使い方、「馬」は足の形を表します。即ち、狭い歩幅で腕を短く使うスタイルです。

香港映画界はたくさんのカンフー映画を生み出しましたが、香港のアクション俳優たちは、武術の基礎として洪家拳を学ぶそうです。したがって、洪家拳は香港のカンフー映画の中で見ることが出来ます。

 

詠春拳詠春拳は、世界的なアクションスターのブルース・リーも学んだ武術流派です。彼の香港での修行時代の師匠が、詠春拳の達人である葉問でした。

詠春拳は、女性武術家の厳詠春が創始したと伝えられ、彼女の名前を取って「詠春拳」と呼ばれるようになりました。詠春拳洪家拳と同じく、「短橋狭馬」の特長をよく備えた流派で、歩幅を短くとり、非常にコンパクト出スピーディーな手技を用います。その拳技のうち8割が防御だといわれますが、防御から連続して攻撃に繋げる技術は、非常に合理的かつ無駄の無い動きです。

また、基礎練習に「木人椿(もくじんとう)」という人形の道具をしようする訓練も有名です。

 

白鶴拳白鶴拳は、清朝中期の女性武術家である方七娘によって創始されたと伝えられます。彼女は父親から武術の基礎を学び、父親から学んだ少林拳に、鶴の動きと独自の歩法を取り入れた白鶴拳を生み出しました。

白鶴拳は、福建省で始められた流派ですが、その後隣の台湾にも伝承され、現在では台湾で最も有名な武術流派の一つになっています。

 

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詠春拳