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【知識篇】 中国語の簡体字

中国語の簡体字は、中国では“简化字”と呼ばれます。簡体字は簡単に言えば、複雑で画数の多い漢字を簡略化するということです。その目的は、中国国内における漢字の普及と識字教育の便宜のためと考えられます。

 

簡体字の歴史

 

近代以降では、最も早く簡体字の普及が叫ばれたのは1920年代初頭の白話運動からでした。白話運動とは、中国語文を従来の文語文(今で言う古代漢語)から口語をベースとした口語文に変革しようという運動です。その流れで、当時の学者や文学者が難しい漢字の簡略化を主張しました。その一つは、1920年に雑誌『新青年』において「簡体字」の普及を主張した言語学者の銭玄同です。

その後、1935年に国民政府教育部が《第一批简体字表》(第一次簡体字表)を公布し、正式な政府の政策として簡体字の普及を進めました。

中華人民共和国に変わってからは、1955年に国務院直属の文字改革委員会が《第一批异体字整理表》(第一次異体字整理表)を公布し、それまでに複数あった漢字の字体を統一しました。その際に取られた原則は、

 

(1) 通用字の採用

(2) 画数の少ない字の採用

(3) 書きやすい字の採用

 

の3つです。当時は多くの漢字に字体の異なる異体字があり、その統一も簡体字と並んで重要な政策だったのです。その結果、810組1865字の中から上記の原則に合致する漢字を規範字に定め、1035字の異体字が廃止されました。

また簡体字の方は、1956年1月に国務院第23次会議において《关于公布汉字简化方案的决议》(漢字簡略化プランの公布に関する決議)が採択され、人民日報紙上においてこの決議案と「漢字簡略化プラン」が発表されました。この時には、第1期230字の簡体字が公布されましたが、その後幾度かの改定を重ね、最新版では2013年6月に公布された《通用规范汉字表》(常用規範漢字表)には、6500字が掲載されています。

 

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《第一批简体字表》

漢字の簡略化(簡体字化)

 

中国共産党政府によって進められた簡体字化は、下記の方法によって行われました。

 

(1) 字形の一部を残す方法

 

蟲  →  虫 (chóng)

廣  →  广 (guǎng)

録  →  录 (lù)

滅  →  灭 (miè)

務  →  务 (wù)

 

(2) 字形の一部を残して変形する

 

婦  →  妇 (fù)

麗  →  丽 (lì)

習  →  习 (xí)

顯  →  显 (xiǎn)

 

(3) 偏つくりの代替

 

斃  →  毙 (bì)

臘  →  腊 (là)

貓  →  猫 (māo)

鍾  →  钟 (zhōng)

 

(4) 繁体字の特長や輪郭の利用

 

齒  →  齿 (chǐ)

奪  →  夺 (duó)

飛  →  飞 (fēi)

龜  →  龟 (guī)

齊  →  齐 (qí)

 

(5) 草書体の楷書化

 

長  →  长 (cháng)

東  →  东 (dōng)

樂  →  乐 (lè/yuè)

書  →  书 (shū)

 

(6) 偏つくりの簡略化

 

鄧  →  邓 (dèng)

觀  →  观 (guān)

對  →  对 (duì)

雞  →  鸡 (jī)

 

(7) 仮借の原理(同音代替)の利用

 

醜  →  丑 (chǒu)

榖  →  谷 (gǔ)

後  →  后 (hòu)

幾  →  几 (jǐ)

 

※「仮借」とは六書(漢字の構成法)の一つで、他の字の音を借りて用いるものです。

 

(8) 会意の原理を利用

 

塵  →  尘 (chén)

涙  →  泪 (lèi)

軆  →  体 (tǐ)

竈  →  灶 (zào)

 

※「会意」とは六書の一つで、二つ以上の漢字を意味の上から組み合わせて新たな字を作ることです。

 

(9) 画数の少ない古字などの再利用

 

從  →  从 (cóng)

禮  →  礼 (lǐ)

雲  →  云 (yún)

衆  →  众 (zhòng)

 

(10) 形声文字の原理の利用

 

膚  →  肤 (fù)

護  →  护 (hù)

驚  →  惊 (jīng)

郵  →  邮 (yóu)

 

※「形声文字」とは、意味を表わす部分と発音を表わす部分からなる漢字です。

 

以上のように、簡体字の制定にはたくさんの方法が取られています。

現在の中国では、実用においては基本的にすべて簡体字を使用していますが、それでも繁体字が全く廃れたわけではありません。例えば、お店の看板や古典の出版物、或いは書法などにおいては、しばしば繁体字が使用されています。便宜上簡体字を普及させたわけですが、それでもなお正式な漢字は旧字(簡体字)だという意識が強く残っているのでしょう。

現在では、世界の言語の中で漢字を実用として使用している地域は、中国、台湾、日本の3ヶ所のみとなりました。

古い時代には、朝鮮やベトナムでも漢字が使用されていましたが、いづれも自ら文字を考案し、実用としての漢字は捨ててしまいました。

漢字を使っている3つの地域では、それぞれ異なる字体を使用しています。即ち、台湾(香港・マカオ)では、繁体字、中国は簡体字、そして日本では旧字体を独自に簡略化した「当用漢字」です。したがって、日本人が中国語(台湾と中国でも異なる字体)を学ぶ、或いは中国人が日本語を学ぶ場合には、新たにそれぞれの地域の漢字を覚えなくてはなりません。とくに、日本人が台湾の繁体字と中国の簡体字を学ぶのはなかなか大変です。

これは私見に過ぎませんが、この3つの地域の漢字の字体を統一してはどうでしょうか?その場合、どの字体を基準とするべきか?これは意見がいろいろと分かれるでしょうが、最も簡素で覚えやすい中国の簡体字を基準とするのが合理的だと思います。